中央銀座法律事務所

よくある質問

借地の立退料の相場はどれくらいですか。

  • 不動産問題

2016.03.24

弁護士の回答

立退料を算定するための定型的な計算式はなく、残念ながら、立退料の相場というものはありません。
ですが、裁判実務の積み重ねにより、個々の立退料を算定するために考慮する要素はある程度定型化してきています。

 立退料とは?

他人が所有する土地や建物を、定期的に決められたお金を払って使う場合、借地契約(賃貸借契約または地上権設定契約)を結びます。

立退料とは、この借地契約について、貸主の都合で土地を明け渡したりしなければなければならないときに、貸主から借主に対して支払われる金銭のことをいいます。
ただし、すべての借地契約について当てはまるのではなく、契約の終了に正当な事由が法律上必要となる契約類型に限られます。

具体的には、借地権者がその土地の上に建物を所有することを目的とする借地契約(定期借地契約、事業用定期借地契約及び建物譲渡特約付借地契約を除きます。)がこれに該当します。

平たく言うと、建物が建っていない借地契約や、貸主に返す時期があらかじめ決められていて変更できない借地契約については、立退料が発生しません。

立退料の決め方は?

貸主と借主双方に土地の使用を必要とする事情の程度がそれぞれどのくらいなのかということを前提に、借地契約がなされた経緯やこれまでの土地の利用の状況などを踏まえて、どれだけの立退料を上乗せすれば、契約を終了させたい貸主の都合を優先することができるかという観点から決まります。

一般的には、立退料の算定要素といわれるものを積み上げて算定されますが、立退料は、貸主の都合を優先させるための補完としての性質を有していますので、必ずしも算定要素の全てが認められるわけではありません。また,算定要素の全て支払えば立退きが認められるというものでもありません。

立退料の算定要素とは?

①借地権の補償

立退料の本質は、借地権を失うことに対する補償という点にあると言われています。

借地の場合、立退料を算定するための基準は借地権価格になります。
借地権価格とは、借地借家法または旧借地法に基づき、借地人が借地を使用収益または処分することによって、借地人に帰属する経済的価値を貨幣額によって表示したものです。地域によって差がありますが、更地価格(土地の実勢価格)の50~70%程度のことが多いです。

そして、個別の事案に応じて、この借地権価格の何割かを借地権の補償の対象としています。

そのほか、以下のような事項も立退料の算定要素として考慮されます。

②引越に要する費用の補償

借主が引越しをする際に引越業者に支払う費用や引越先までの交通費などが該当します。

③新たな借地契約のために必要となる費用の補償

移転先の貸主に対して支払う権利金や礼金,不動産業者に対して支払う仲介手数料等が従前の借地契約のときより高額となる場合の差額などが該当します。

④立退前の賃料と新たな賃料との差額の補償

同等の物件の賃貸借を前提にするため、新たな物件の方が優れているために賃料が高くなる分については除かれます。

⑤移転する際の雑費の補償

住民登録上の届出に要する費用など,移転通知に要する費用が該当します。

⑥投下資本が回収できないことへの補償

借地上の建物の買取相当額

借地の期間満了による終了の場合には、借地人が建物買取請求権を有することとの関係で、貸主の都合で契約が終了する場合にも同様に扱うべきであるとい考え方に基づいています。

⑦営業補償

他の場所では営業を継続することができず廃業を余儀なくされるという場合、移転先での営業再開後の顧客の喪失等が懸念される場合、移転先での営業再開までに休業が必要な場合などにおける損失額が該当します。 

⑧地縁的、社会的変化に対する補償

特に居住用不動産の場合に当てはまることになりますが、長期間にわたり一定の地域において生活をしてきた基盤を失うことによる精神的な損害に対する補償になります。